2006年度日本経営品質賞受賞スピーチより
2006年度 日本経営品質賞表彰式
日本経営品質賞表彰式は、2006年12月1日、ロイヤルパークホテルの「ロイヤルホール」で開催されました。
表彰式 スピーチ
経営品質向上プログラムと出会ったきっかけは、平成11年にISOに取り組んだ際に、審査員の一人から経営品質を紹介された社員のレクチャーを受けたことでした。その時、人を大事にして人を育てるプログラムという点にピンときました。時間はかかるけれど、これをやり遂げたなら素晴らしい組織になると思いました。
今回、地方自治体で初めての受賞となりました。取り組んだ時期が良かったこともありますが、日本の行政システムの構造は遅れていると認識しておりましたので、今回の滝沢村役場の受賞は、一緒になって頑張っていこうという自治体が現れるひとつの糧になったように思います。日本が元気を取り戻す第一歩になれば良いと思っております。
今回の受賞において、この取り組みについて来てくれた社員たちを一番に褒めてあげたいと思っています。取り組みにおいては、当初一番抵抗していた人が最初に変わっていったのが大きかったと思っています。とは言え、地方公務員法に守られている中で、今までのやり方がなぜ悪いのかということに気づくのは至難の業です。その意味では、先頭を切って取り組んでくれた人たちは大変苦しい思いをして、サンドバック状態の時もありました。こうした取り組みの中で感じたのは、理論が必要であることと、理論だけでは進まないので、理論を現場におとす能力をもった人が必要ということでした。最後は実際に現場におとすことが求められます。また、未来ある若い人たちに対して先に火をつけ、下の職員から意識が燃えていけば、上の方も熱くなっていくだろうということを描いていました。このやり方は成功したと思っています。
今、思い返して、本当に辛い時もありましたが、本当によく社員がついて来てくれたと感謝しています。自分がいなくなっても動く組織になりましたが、残念ながら地方自治体のトップには任期がありまして、いつまでも続けられるわけではなく、どこかで辞めなければなりません。しかしながら、全国の地方自治体のトップに言いたいのは、今するべきことは何なのかという歴史的な使命感を認識して、本当に身体を張って頑張ってもらいたいということであります。当然、トップ自身が自分の世界観を持たなければなりませんが、周辺にいる人たちもトップの使命感を理解して、支援していって欲しいと思っております。
経営品質向上活動に取り組むと本当に次々と良いことに気づいていきます。そして、まだまだ自身は未熟だったということがわかります。その意味では、歳はとっても自分自身で反省することはたくさんあります。今後も、特に行政の分野で経営品質向上プログラムが一層進化していくように頑張っていきたいと考えております。トップが交代することによって若干の改革のゆり戻しがあるかもしれませんが、全国のみなさまに支えていただき、見守っていただきたいと思います。
2006年度 日本経営品質賞報告会
日本経営品質賞報告会は、 2007年2月28日~3月1日に横浜市みなとみらいのパシフィコ横浜会議センターで開催されました。
報告会 トップ・スピーチ
この度、日本経営品質賞・地方自治体部門で初の受賞という評価をいただきましたことに対しまして、大変光栄なことであると思っております。
滝沢村は、岩手県の県庁所在地である盛岡市の北西部に位置する人口約5万3千人の村で、村としては人口日本一であります。東北新幹線盛岡駅から眺めることのできる秀峰岩手山をいただき、自然環境に恵まれた村として明治22年の町村制施行以来合併をしないまま現在にいたっております。もともと純農村でありましたが昭和40年代後半から宅地化が進み、平成12年2月15日に人口5万人を達成しました。村内には3つの大学が立地しているほか、東部地域には国、県の試験研究機関も集積するなど、産業分類としては約7割が第3次産業に分類されております。
さて、いま我が国は、人口の減少や少子高齢化など我が国特有ともいえる大きな環境変化の中にあります。これまでの経済活動や就業構造が一変し、地域社会のかたちも変わってきております。地方自治体を取り巻く環境も激しい変化を続けております。平成12年4月から地方分権一括法が施行され、明治維新や先の大戦後の改革に匹敵するといわれる大転換がなされ、今なお分権改革は継続しております。中央政府からの指示命令を待つ仕事から現場で問題を明らかにし、現場で解決をする仕事の仕方に変えていかなければなりません。知識が豊富で法解釈に長けていれば優秀な公務員として活躍できた時代は遠ざかり、限られた資源のもと住民の声に耳を傾け、あらゆる情報を集約して問題を探求し、本質的な解決方法を住民とともに編み上げていくための協力者としての能力が求められるようになってまいりました。
私は、村長選挙で村民1人ひとりが希望の持てるまちづくりのためには、村民と村行政が協力し合って地域力を高め、効率のよい行政経営を行う必要があると訴えてまいりました。このことを実現するためには、村民との対話を基本にしながら、村職員が積極的に地域に入っていくことが大切であると考えています。経営品質向上プログラムの基本理念にある「住民本意」や「職員重視」、「社会との調和」、そして、その基本として「対話」を重視するという考え方は、私自身の基本スタンスと共通するものであります。
さて、「地方自治体」と一言で表現されておりますが、各々の置かれている環境は、地域性や規模、風土や文化によって非常に多様なものであります。特に私たちのような地方の自治体は国の三位一体改革や少子高齢化等の影響を強く受けており、非常に厳しい行財政環境にあります。分権時代の自治体はどのようなかたちを求めていけばいいのか。行政組織が果たすべき使命は何なのか。厳しい環境の中、全国の各自治体では破綻を回避し、それぞれの社会環境にふさわしい新しい自治を築いていくため、様々な切り口から改革を進めております。
私は、この度の受賞は今後住民主体の「滝沢村」という地域社会を創造していく上での第一歩と受けとめております。実際、役場内部の改革というものは、住民の皆さんには伝わりにくく、成果が見えにくいという面は否めません。しかしながら、役場内部の組織と職員が各々自信と責任をもった品格を備えてこそ、真に住民の皆さんと向き合えると考えております。これまで培ってきた役場組織の能力や職員個々の能力を今こそ住民の皆さんに示し、共に行動していく時だと考えております。
先にも申し上げましたとおり、役場組織としての受賞は「滝沢村」という地域社会を幸せで心豊かな地域として創造していく上での土台になるものと考えております。今後、役場がより住民の皆さんにとって身近な存在となり、納得と共感をいただけるよう、地域の発展に努めて参りたいと考えております。
最後に、今年の全国高校サッカーで岩手県の盛岡商業高等学校が全国制覇を果たしました。どんなときもあきらめない粘り強さとチームワークで優勝した「盛商サッカー」を見習い、私自身「チーム滝沢」の監督として積極的に住民や職員の中に入り、対話を重ね、日本に誇れる「滝沢村」を共に築いて参りたいと思います。
どうかこれからも滝沢村に対しましてご指導とご鞭撻を賜りますようお願い申し上げまして御礼とご報告に代えさせていただきます。